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オシャレのレシピ【vol.3】〜洋服の「ルーツ」を学ぼう〜

はじめに

前回の記事では、洋服を構成する3つの要素「カラー」「ルーツ」「トレンド」のうち、「カラー」についてお話ししました。

メンズファッションおいてもっとも重要な色は「黒」だということが分かったと思います。また、黒は、礼装や喪服などに使われる色であり、もっとも地味な色だとも書きました。

今回は、これを踏まえた上で、洋服を構成するもう一つの要素である「ルーツ」について勉強していきましょう。

洋服には7つのルーツがある

1882年、イギリスで出版された『Costumes of All Nations 』掲載の1830年からの各地の軍装の図板

現在の洋服はおもに、下記の7つをルーツ、つまり原型としています。

  1. スーツ&制服
  2. ミリタリー
  3. アウトドア
  4. スポーツ
  5. ワークウェア
  6. 下着
  7. 民族衣装

例えば、テーラードジャケットはスーツスタイルから、Gパンはワークウェア、ポロシャツやスニーカーはスポーツウェアといった具合です。

ユニクロからルイヴィトンまであらゆるブランドで売っているカジュアル衣料やビジネスウェアのほぼすべては、上記の分類のルーツを原型としたアイテムです。

ただし、ほぼすべてと言ったのは理由があります。諸説あり、由来がはっきりしないものや、時代によって役割が変わっていくアイテムもあるからです。

例えば、ウールで編まれたセーターですが、これは、もともと男性がスポーツをする際に、伸縮性や吸湿性といった機能性から着用されていたものですが、女性のファッションに初めて取り入れたのはデザイナーのシャネルだといわれています。

つまり、もともとはスポーツをルーツとしながらも、時代の変遷によって、日常着やおしゃれ着に変わっていくアイテムもあるのです。

しかし、ここでは、服にはもともとちゃんとした役割があり、その機能性によってデザインされていると覚えておいてください。

インドネシア、スマトラ島、婚礼衣装を着たガヨ族の男性。

さて、上記7つのルーツですが、「スーツ&制服」を除いた6つのジャンルはすべてカジュアルと言われる洋服だと気づいたでしょうか?

いま現在、日本で着られている洋服の大半はカジュアル衣料です。これは靴で考えるとすぐわかるでしょう。

普段、外出する際に履く靴といえば、スニーカーが圧倒的に多いはずです。スーツスタイル以外で革靴を履いているという人は、2020年代の日本において、かなり少数派だと思います。

実際に街に出てみれば一目瞭然です。こと男性に限っていえば、子供からおじいちゃんまで、実に多くの人がスニーカーを日用品として愛用していることがわかります。

これは、スニーカーがスポーツをルーツとしているので、当たり前のことですが、人が歩く動くといった動作をする以上、運動に特化した靴であるスニーカーが選ばれるのはごく自然なことなのです。

つまり、現在の日本においては、街着は「スーツ&制服」を除いた「ミリタリー」「アウトドア」「スポーツ」「ワークウェア」「下着」「民族衣装」といったカジュアル衣料で占められていると覚えておいてください。

ルーツでもっとも重要な「スーツ」

出典:thesartorialist

先に種明かしをしておきまましょう。

現在の日本の街着において、手軽にオシャレに見せる最大のコツは、これまで説明してきた「カラー」は黒、「ルーツ」は「スーツ」の要素をコーディネートに取り入れることです。

なぜかというと、ほかの人はほぼ全身の「カラー」がカラフルであり、全身カジュアルな洋服を着ている人が多いからです。

ここで、街ゆく人を思い出してみてください。若い人から、お年寄りまで、多くの男性は、パーカーやTシャツ、Gパンやチノパンにスニーカーを合わせている人が多いと思います。

また、それらの洋服は黒ではないはずです。実にさまざまな色であふれているでしょう。

少しオシャレに見せる最大のコツは、他人と差別化することです。人と少し違うからこそ、新しい価値観を提示することができ、それは、つまり、オシャレに見えるということです。

人とまったく同じ格好をしていても、それは新しい価値とは言えません。そして、日本中が派手なカジュアル衣料であふれている現在、簡単に差別化するコツこそ、「黒」と「スーツ」なのです。

では、具体的にどういうことかというと、普段日常で着る洋服、つまり「街着」において、全身カジュアル衣料で揃えることはごく普通のことだと思います。

しかし例えば、全身「アウトドア」であればそれは登山をする人、全身スポーツであれば運動する人、全身ワークウェアであれば、作業する人です。

洋服にはルーツがあると書きました。つまり、もともと役割があった服を、時代の変遷とともに日常の街着として着るようになったのが現在の洋服です。

出典:Wikipedia(映画『理由なき反抗』で一世を風靡したジェームズ・ディーンのファッション)

労働服であったデニムパンツを1950年代にマーロン・ブランドやジェームズ・ディーンといったアメリカの俳優たちが映画で着こなしてみせ、ファッションとして定着していった歴史があります。

そして、多くの人が見過ごしていることがあります。それは「街着」用の洋服は存在しないということです。

ここまで、洋服にはルーツがあると書いてきました。しかし「街着」というルーツはありません。

つまり、本来、用途が存在していた洋服を、時代の流れとともに日常でも着るようになったにすぎないのです。この点に日本人はとても無自覚です。

それは、もちろん日本人は洋服の歴史が浅く、基本的に洋服の歴史の変遷を知らないうえに、敗戦後のアメリカの影響が大きく、街着がいわゆるアメカジに偏っているので当然のことなのです。

では、なぜ「黒」と「スーツ」が重要なのか。それは、黒がもっとも格式の高い色であり、「スーツ」がカジュアルの対極に位置するからです。

全身カジュアル100%の街着のなかに、「スーツ」の要素と「黒」を少し取り入れることで、他人とは違ったコーディネートになります。

オシャレに見える街着は「混ぜる」、つまりミックスで成り立っています。もちろん全身カジュアルであってもおしゃれに見せることは可能です。

ただし、これまで述べてきたとおり、それでは他人と差別化することができません。また、カジュアルに偏りすぎると、どうしても色使いが多くなり、雑多な印象になります。

カジュアル100%のコーディネートに「黒」と「スーツ」の要素を少し取り入れてバランスをとっていく。これがもっとも簡単におしゃれに見せるコツなのです。

オシャレのレシピ【vol.3】のまとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事では、洋服を構成する3つの要素のうち、「ルーツ」についてお話ししました。

そして、7つあるルーツの中でも、メンズファッションおいてもっとも重要なルーツは「スーツ」ということが分かったと思います。

このことを覚えた上で、次回は具体的な例をあげて勉強していきましょう。

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