ジルサンダーとは?デザイナーの歴史やプラスとの違い、似てるブランドについて

ジルサンダー(JIL SANDER)ってどんなブランド?調べてみたけどよく分からないなあ。
こんな疑問にお答えする、ブランド解説シリーズ。
今回は、ミニマリズムを代表するファッションブランド「ジルサンダー」ついてご紹介します。
ユニクロとのコラボでも有名なブランドですが、個人的にもおすすめのブランド。その魅力を余すことなく徹底解説します。
目次
ジルサンダーとは?

ジルサンダーとは、ドイツ出身の女性デザイナー「ジルサンダー」氏が自身の名を冠して設立した、イタリアのミラノを拠点とするファッションブランドです。
「装飾のないデザイン」をコンセプトにし、高品質な素材と精度の高いカッティングにより、無駄を削ぎ落としたミニマルで高級感のあるデザインが特徴です。
主に30代以上の幅広い世代の男女から愛されているブランドで、日本では2020年のユニクロとのコラボ「+J」が大きな話題になりました。
また、後に説明しますがデザイナーが何度も交代しているブランドとしても知られています。
そのストーリーに注目がいく個人的にも非常に面白いブランドです。
ちなみにジルサンダーを知る上で、1つ注意点があります。
それはブランドの「ジルサンダー」と、デザイナーの「ジルサンダー」が混同されがちなこと。
例えばユニクロの「+J」はデザイナーのジルサンダー氏個人とのコラボなので、ブランドのジルサンダーは関わっていません。
少し複雑ですよね。今回ご紹介するジルサンダーのように、ハイブランドはデザイナー自身の名前をそのままブランド名にするケースが多くありますので、混同しないように気をつけましょう。
次に、日本でジルサンダーを一躍有名にしたユニクロとのコラボをざっと見ていきましょう。
ユニクロとのコラボ「UNIQLO +J」

UNIQLO +J(プラスジェイ)とは、ユニクロとデザイナーのジルサンダー氏のコラボラインになります。
最初にユニクロがジルサンダー氏とコラボしたのは2009年。
当時も非常に大きな話題になりましたが、2011年にはデザインコンサルティング契約が終了となり、「+J」も一度終了しています。
その後、2020年に再度契約が行われ、「+J」が復活。
記憶に新しい方も多いと思いますが、2009年に負けず劣らずの話題を呼び、発売当日は店舗は入場規制を行うほどの大行列、オンラインストアもサーバーダウンするほどの人気っぷりでした。
僕も実際に全型を購入してレビューしていますが、ジルサンダーの特徴であるミニマルなデザインと、ユニクロのシンプルで上質かつ日常使いに優れたテイストがうまく融合した、とても良いコラボレーションでした。
しかしそれも翌2021年には契約が終了しています。
後にご紹介しますが、ジルサンダー氏は自身のブランドを実に3度も出たり入ったりしている曲者。
ちなみにユニクロは、ジルサンダー以外にもいくつかの有名なデザイナーとコラボをしています。
- UNIQLO U(クリストフ・ルメール氏)
- UNIQLO and JW ANDERSON(JW・アンダーソン氏)
- INES DE LA FRESSANGE(イネス・ド・ラ・フレサンジュ氏)
次は、2019年に誕生したジルサンダーの新ライン「ジルサンダー+(プラス)」を見ていきましょう。同じ「+」マークが付くのでややこしいですが、ユニクロの「+J」とは全くの別物なのでご注意を。
2019年誕生の新ライン「ジルサンダー プラス」とは?

ジルサンダー+(プラス)とは、2019-20年秋冬シーズンに登場した、ジルサンダーの新ライン(レーベル)です。
こちらはデザイナーのジルサンダー氏は無関係で、ブランドのジルサンダーから派生して誕生しています。
ミニマリズムを追求した本家ジルサンダーとは違い、「都会から抜け出した暮らし」をコンセプトに、「機能性・実用性・リラックス感」といった要素がプラスされているのが特徴です。
山が身近にある環境で育ったというクリエイティブディレクターのルーシー&ルーク・メイヤー夫妻の経験が製品開発に反映されているそうで、
自然をインスピレーション源に、山や海、カントリーサイドへの旅行などを提案しています。
ニュース発表を見ると本家ジルサンダーと同程度の価格帯で展開とありますが、実際にオンラインストアを見てみると本家よりも安めのアイテムが多い印象です。
ちなみにライン名に記されている「+」には、素材と性能へのこだわりや、専門分野に特化した取引先とのパートナーシップという意味が込められているそうです。
実際にイギリスを代表するアウターウェアブランドである「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」とコラボし、アウターウェアやアクセサリーを展開するなどしています。
さて、前置きが長くなりましたが、次はジルサンダーを語る上で欠かせない「デザイナーの歴史」を見ていきましょう。
紆余曲折!?デザイナーの歴史

出典:https://precious.jp/list/precious-brand?brand=Jil%20Sander
ブランド「ジルサンダー」の生みの親であるデザイナー「ジルサンダー」氏ですが、この人ほど自分のブランドとの付き合い方において混迷を極めた人は他にいないかもしれません。
というのも、ジルサンダー氏は実に3回も自分が創設したブランドから離れているんです。
そして2022年の今現在もブランドから離れており、今ジルサンダーのデザイナーを務めているのはルーシー&ルーク・メイヤー夫妻です。
デザイナー「ジルサンダー」氏はいったいどのような歴史を辿ってきているのか?下記で見ていきましょう。
ジルサンダー誕生の日
ブランド「ジルサンダー」が誕生したのは1968年、ドイツのハンブルクにて、女性デザイナーのジルサンダー氏が自身の名を冠して立ち上げました。
もともとドイツ出身のジルサンダー氏は、ハンブルクのテキスタイル専門学校を卒業後、テキスタイル・エンジニアとして働いていました。
その後アメリカに渡り、カリフォルニア大学に留学後、ニューヨークの出版社に就職し、ファッションジャーナリストになります。
その後、ドイツに戻りブランド「ジルサンダー」を立ち上げます。
ジルサンダー氏が提案したのは、素材に徹底的にこだわりながら、デザインは装飾のないミニマルに統一したファッションです。
彼女はこのミニマルファッションを武器にパリコレクションに参加し始めますが、当時はミニマルなデザインよりも装飾的なデザインの方が時代の流れに合っていたため、これといった評価を受けることができませんでした。
ファッションのトレンドというものは、社会背景や娯楽・人々の飽きと密接に関わっており、基本的にシンプル→装飾性→シンプルといったように時代で繰り返しますから、装飾性がトレンドとなっていた当時はジルサンダーのミニマルなデザインは世の中に求められていないタイミングだったのです。
パリコレクションで評価を受けられなかったジルサンダー氏は、1980年代半ばから発表の場をミラノへと移し、そこからは長くミラノコレクションに定着します。
そして、世の中のトレンドが装飾性→シンプルに変わりゆくタイミングでジルサンダー氏のミニマルファッションが認められ始め、1990年代に入りようやくミラノトップクラスのブランドとしてその地位を確立しました。
また、パリコレクションに比べてミラノコレクションは保守的な傾向が強いので、ジルサンダーのミニマルファッションと相性が良かったという説もあります。
1回目の離脱
苦節の末、世界的な評価を手にしたジルサンダー氏ですが、ここでブランドから1度目の離脱をすることとなります。
それはプラダによるブランド買収が要因です。
プラダは成長を続ける「ジルサンダー」というブランドにいち早く目を付け、1999年にブランドを買収しました。
この買収によりジルサンダーはプラダ系列へと統合されましたが、創業者であるジルサンダー氏と親会社であるプラダとで衝突することが重なり、結果、ジルサンダー氏はブランドから離れる道を選んだのです。
2回目の離脱
プラダとの衝突をきっかけにブランドを離脱したジルサンダー氏ですが、3年後の2003年には再びクリエイティブ・ディレクターとしてジルサンダーに戻ってきました。
しかしその後もプラダとの方向性が一致せず、翌2004年に再びブランドを離脱(2回目)します。
これにより、ブランド「ジルサンダー」は、新たに就任したクリエイティブ・ディレクターの「ラフ・シモンズ」氏に託されます。
ラフ・シモンズ氏は「必要ではないものが一切存在しないというレベルまでぎりぎり削ぎ落とす」という考えを持っていため、ジルサンダーが追求するミニマリズムと非常に相性の良いデザイナーでした。
この相性の良さもあいまって、ブランド「ジルサンダー」は創業当初から持つアイデンティティを崩すことなく、ラフ・シモンズ氏によってさらに成長を続けます。
一方その頃、当のジルサンダー氏は何をやっていたかと言うと、皆さんご存知のユニクロとのコラボレーションです。
ブランド「ジルサンダー」を離れたシルサンダーは、今度はデザイナー個人として、2009年春に日本のファーストリテイリング(ユニクロ)と契約を結びます。
そして同年秋に「+J」というユニクロとのコラボラインを展開し、再び世界にその名を轟かせるのです。
しかしここでもトラブル発生で、今度はファーストリテイリングとの仕事が次第にうまくいかなくなっていき、わずか2年程でファーストリテイリングとの契約も打ち切られてしまいました。
ここまで読んでくださった方はもうお気づきかと思いますが、ジルサンダー氏は度々このようなトラブルに見舞われ、携わる仕事から何度も離脱を繰り返している人物です。
詳しくは後述しますが、これこそがジルサンダー氏が「鉄の女」と呼ばれる由縁でもあります。ビジネスの売上よりも自身の美学を突き通す彼女の生き様を表した呼び名です。
3回目の離脱
ジルサンダー氏の2回目の離脱によりラフ・シモンズ氏に任されることとなったブランド「ジルサンダー」ですが、今度はラフ・シモンズ氏が退任してしまいます。
紆余曲折を続けるジルサンダーブランドですが、ここであらためて創業者であるジルサンダー氏に白羽の矢が立ち、なんと3度目の復帰を果たします。
これまで親会社のプラダをはじめとする経営陣との軋轢により何度もブランドを離脱してきただけに、今度は長持ちするのか世界中から注目が集まりましたが、やはり長続きする事はなく、約1年半後の2013年秋にまたブランドを離脱(3回目)することになりました。
自身の創設したブランドから実に3度も離脱するのはトップメゾン分野では前代未聞レベルの出来事でしたので、世界中でも大きく報道されるまでに至っています。
その後のジルサンダーブランドはというと、これもまた混迷を極めます。
2015年シーズンに新たなデザイナーとして「ロドルフォ・パリアルンガ」氏が就任しましたが、彼も長く続かず、2017年にジルサンダーを去ってしまうのです。
このように紆余曲折を続けるジルサンダーブランドですが、2017年に迎え入れた夫婦デザイナーデュオである「ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻」により、やっと落ち着きを取り戻します。
毎年のようにデザイナーが変わるという事態が続いていましたが、今現在は彼ら夫婦により、安定し高い評価を得るブランドとしてその地位を確立しています。
「鉄の女」ジルサンダー
実に3度も自身のブランドを離脱したジルサンダー氏。
彼女は服作りにおいて一切の妥協を許さない職人気質であり、利益を重視するビジネスとは相入れない人物でした。
例えば1度目の離脱でお話したプラダグループとの対立も、素材の品質を落とすことを許さないジルサンダー氏と、素材のコスト削減を求めるプラダグループとの意見の食い違いが、辞任の理由とされています。
こうした経歴から、現在では「鉄の女」とも呼ばれるようになりました。
個人的はとても面白いブランドヒストリーとして見ていて、彼女について調べていくうちにどんどんとその魅力に惹きつけられました。
少し話が逸れますが、そもそもオシャレとは人との差別化から生まれるものです。
なので人は、他人とは違うもの、他人よりも良いと感じるものを求めます。だからこそオシャレな人は、ユニクロなどの大衆が身に着けるファッションではなく、少し高いお金を出してでもデザイナーズブランドのような個性を打ち出したブランドを選ぶわけです。
そういった意味で言うと、ジルサンダー氏のビジネスに迎合せず自身の美学を貫き通す姿勢は、デザイナーとして非常に尊敬できるものであると言えます。
話が長くなりましたが、次はその「鉄の女」が生んだジルサンダーの特徴を見ていきましょう。
ジルサンダーの特徴

先ほどご紹介した通り、ブランド「ジルサンダー」の生みの親であるジルサンダー氏は、「鉄の女」と呼ばれます。これは彼女の生き様からついた呼び名です。
そして実は彼女にはもう一つの呼び名があり、それは「ミニマリストの女王」です。これこそがジルサンダーの最大の特徴になっています。
ジルサンダーはミニマリズムの代表ブランドと言われており、「装飾のないデザイン」をコンセプトに、高品質な素材と精度の高いカッティングで、無駄を削ぎ落としたミニマルで高級感のあるデザインが特徴です。
ファッションは足し算によるアプローチが多いですが、ジルサンダーは引き算で整えていく、数少ないブランドの一つですね。
シンプルが故に切る人を選びませんし、Tシャツなどのアイテムも1枚でさまになります。装飾がそぎ落とされているので様々なコーディネートにも合わせやすいでしょう。
ちなみに先述の通り、現在のデザイナーは創業者のジルサンダー氏ではなく、ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻が務めています。
彼らによってデザインやテイストの変更はあるものの、従来のジルサンダーらしさはぶらさずに、ミニマルなデザインを軸としたアイテムが中心となっています。
この創業当初から貫き続けるミニマルファッションが、時代の変遷とともに着る人の内面の豊さを引き出すとして評判を呼び、現在のトップブランドとしての地位を築き上げたのです。
こんな人におすすめ!年齢層や系統など

ジルサンダーは、ミニマルで洗練されたデザインが好きな方におすすめです。
ここまででご説明してきた通り、ジルサンダーはミニマリズムの代表的なブランドですので、そうしたデザインやテイストが好きな方にはうってつけのブランドと言えるでしょう。
ミニマルやシンプルをコンセプトにしたブランドは他にもありますが、ジルサンダーほど無駄を削ぎ落とし、かつ高級感を感じられるブランドは他にありません。
とはいえ、似てるブランドが知りたいという方も多いと思うので、強いてあげるならユニクロともコラボしているルメールがやや似ていると言えるでしょう。
また、OAMC(オーエーエムシー)というブランドは現在のジルサンダーのデザイナーの一人であるルーク・メイヤーが手掛けているので、気になる人は是非チェックしてみてください。
実際に店舗に行くと実感できると思いますが、ジルサンダーのアイテムは洗練されています。
おすすめの年齢層としては、シンプルデザインが故に着る人を選びませんので、ジルサンダーが好きな人であればどの年齢でもいけます。
ただし価格帯を踏まえると30代以上の男女になるかと思います。世界的に見ても愛用者は30代以上の世代が中心になっているようです。
以上のように、ジルサンダーはミニマルで洗練されたデザインが好きな方におすすめのブランドです。クセのないアイテムが中心ですので、新たにハイブランドに挑戦してみたい方にもおすすめできますね。
ハイブランドはモード(最先端性)寄りの派手見えするデザインのアイテムが多いですが、ジルサンダーはハイブランドでありながら非常にシンプルなデザインをしていますので、そういう意味では非常に稀有な存在のブランドと言えるでしょう。
ジルサンダーの評判

自分が着用するブランドの評判は気になるもの。
ジルサンダーの世間一般からの評価はどのようになっているでしょうか?
というわけで、以下の2つの方法で口コミを調べてみました。
- 僕のInstagramでのアンケート
- 世間一般のクチコミ
僕のInstagramでのアンケート
簡単なアンケート調査を行ったところ、「知らない」と答えた人がわずか1%!圧倒的な認知度の高さです。
「好き」と答えた人も約4割に登っており、人気の高さがうかがえます。
「知ってるけど買ったことがない」は、おそらくジルサンダーお値段の高さも影響しているでしょう。
よければ下記参考にしてみてください。

世間一般のクチコミ
良いクチコミがほとんどで、悪いクチコミは見つけることができませんでした。
ユニクロとのコラボライン「+J」に対するコメントも多くみられました。
ジルサンダーはどこで買える?

ジルサンダーのアイテムは実店舗またはオンラインストアにて購入可能です。
実店舗は日本全国に約17店舗あり、東京をメインに、その他の主要としに数店舗を展開しているような状況です。
高級ブランドということもあり、ショッピングモールなどの商業施設ではなく、伊勢丹や三越などの百貨店に出店しており、路面店もそこそこ存在しています。
下記に店舗情報をまとめましたので良ければご参考ください(2022年時点/一部抜粋)
実店舗
▼関東
新宿:ジルサンダー 伊勢丹新宿
渋谷:ジルサンダー 西武渋谷
銀座:ジルサンダー 銀座三越
表参道:ジルサンダー 表参道
二子玉川:ジルサンダー 玉川髙島屋S・C
▼関西
大阪:ジルサンダー 阪急うめだ本店
渋谷:ジルサンダー 阪急メンズ大阪
▼中部
名古屋:ジルサンダー 三越名古屋栄
▼九州
福岡:ジルサンダー 岩田屋福岡
▼北海道
札幌:ジルサンダー 丸井今井札幌
※詳細は「公式ホームページ」よりご確認いただけます。
WEB店舗
※詳細は「公式ホームページ」よりご確認いただけます。
まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!
ミニマリズムの代表ブランドである「ジルサンダー」は、創業者であるジルサンダー氏と同様に、さまざまな時代の変化と紆余曲折を乗り越えてきたブランドです。
現在はジルサンダー氏がブランドから離れてしまってはいますが、創業当初から変わらない「装飾のないデザイン」というコンセプトはしっかりと受け継がれています。
個人的にも好きなブランドの一つで、特にミニマルファッションが好きな人には一押しのブランドです。
この記事を読んでジルサンダーが気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
今後もブランド解説をはじめ、さまざまなファッション関連情報をお届けしていきますので、ぜひお楽しみに!